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2008年10月23日 (木)

投資銀行ってなんだろう?③

サブプライム問題による金融不安により、アメリカから純然たる投資銀行が姿を変えてしまいましたが、日本の投資銀行はどうなってしまうのでしょうか? 個人的には、日本の投資銀行は基本的には現在のまま残っていくことになると思います。

というのも、アメリカの投資銀行が破綻したのは、投資銀行のコアのビジネスで失敗した訳ではなく、利益を最大限追求しようとして、余りにも巨額なリスク資産を抱えてしまったことが問題の根本だと思っています。日本の経営の仕組みでは、アメリカと比べて経営者に金銭的なインセンティブが与えられていなかったため、日本の投資銀行はそこまでリスクを取ったビジネスを行ってきていなかったと思います。もちろん、リスクを取ったビジネスをしたくともノウハウが無かったという背景もあると思います。

投資銀行の旧来のビジネスである資金調達の仲介や証券の売買は、今後日本でも必要とされていますし、当然米国でも求められています。その行為主体が日本では投資銀行であり続け、アメリカでは再度商業銀行に戻ったというのだと思います。

ただし、日本の投資銀行は存在し続けるとは思いますが、収益力は格段に下がるのではないかと思います。日本の投資銀行といえども、二次的に米国のレバレッジを掛けたビジネスの恩恵を被ってきました。その例が、ヘッジファンドとの取引です。今後は、世界的な信用収縮によってヘッジファンドに流入するマネーは減り続けると思います。

私見ですが、日本の投資銀行が成長していくためには、今までアメリカの投資銀行が行ってきたように、成長フロンティアへのビジネス展開がひとつの道だと思います。今までは、アメリカの投資銀行と勝負しようにも資金的にも能力的にも勝つことができませんでしたが、現在の環境では欧米の競合が拡大路線に走ることは考えられませんので、競争は緩やかだと思います。そのような成長余地の大きい地域にて旧来のビジネス(仲介業務)を展開することが、当面の成長戦略だと考えています。振り返ってみると、野村證券がリーマンブラザーズの欧州アジアの人員を引き継いだのは大正解だったような気がします。後は、その人々をいかにマネッジするかが問題ですが、頑張って欲しいです。一方で、個人的には三菱UFJのモルガンスタンレーへの資本注入は、愚作だと思います。高い金額で、経営権も取得できず、かつ成長余地の少ない米国を中心としたビジネスに投資するとは。。。僕の浅はかな考えにも及ばない戦略が実はあったりすることを期待してます。

投資銀行ってなんだろう?②

投資銀行の業務は、本来はリスクがそんなに高いものではなかったと思います。もちろん、株式市場に依存するお仕事なので業績の上げ下げはありますが、所詮は仲介ビジネスです。しかしながら、投資銀行が本来の業務から離れ、過度に「投資」を行ってしまったのが問題の出発点です。(投資銀行の名前からしたら、投資するのが当たり前のような気もしますがね。)

何が投資銀行を過度の投資に走らせたかというと、以下の2つが考えられます。

    既存のビジネスの成長余地が減ってきた

投資銀行で一番儲かるビジネスは、IPOなどの企業が株式を資金調達することをサポートするビジネスなんですね。(厳密にいうとIPOでも資金調達をしない場合があります。例えば株式売出だけとか。ただ、細分化すると本質的なことが見えなくなるので、ここでは無視します。)たとえば、株式で1,000億円の資金調達をする場合に投資銀行に手数料がいくら入るか分かりますか?だいたい世の中で最低の水準でも手数料率は4%なので、40億円程度の手数料が入ります。証券会社は製造業ではないので、ここから原材料費とかをさっぴく必要がないのです!なんて美味しいビジネスなんでしょう。ただし、問題は国が成熟化していくと、IPOする企業が減っていき、また、既に上場している企業も設備投資額が減りキャッシュフローが豊かになっていくので、株式で資金調達をする必要がなくなってきます。そうすると、投資銀行の収益源が減ってきますので、まずは目を外に向け始める訳です。ゴールドマンサックスが意図的にかは不明ですが、BRICSと騒ぎたて、ブラジル、ロシア、インドそしてチャイナへの投資を煽りましたが、そのような新興国で同様のビジネスを展開し、新たな成長フロンティを捜し求めていくわけです。しかしながら、そのような国が無限にある訳ではないので、このような既存のビジネスの成長余地は限られたものとなってしまいます。そのことが、投資し走らせたのだと思います。総合商社も仲介ビジネスだけでは儲からなくなってきたので投資がビジネスの中心になってきましたね。商社の場合は、資源高のおかげで、“今のところ”は絶好調です。

    過度なインセンティブによる欲の肥大化
アメリカに住んでいてホントに驚くのはシンプルなインセンティブがないと人が動かないということです。ドラッグストアやマクドナルドの店員なんて、愛想のかけらもありません(もちろん田舎に行くとちょっと違いますが)。一方、レストランの店員などは不必要に愛想が良いです。特に呼んでもいないのに、”How’s everything?”などと数分おきに聞いてきます。この違いが何かというと、チップというインセンティブの存在なんですね。
この極端な例がWall Streetの成果報酬の仕組みだと思います。アメリカの企業にとって誰が一番重要かというという質問に対する答えはものすごくシンプルで、株主です。その一番重要な株主に貢献するためには、株価を上げる必要があります。株価を上げるためには収益を上げることが求められます。したがって、収益に貢献した人に見返りをあげるのは、凄くシンプルでロジカルな帰結です。経営者や従業員もシンプルな動機付けを欲していますから、このような仕組みを受け入れ積極的に採用する訳です。しかしながらこのような成果報酬の仕組みにも、もちろん問題があると思います。ひとつは、この成果報酬のサイクルが短期だということです。短期間に収益を実現するためにはリスクをとらなくてはなりません。もうひとつが、報酬が天井知らずなのに対して、ダウンサイドは個人で負担する必要がないと言う点です。つまり、人の金を使いながら、勝ったら自分の取り分をもらい、負けたらお金を貸してくれた人の負担ということになってしまいます(もちろん職を失うというリスクはありますがね)。まぁ、そうすると当然、人々はどんどんリスクを取って、報酬を上げようと行動しちゃいます。実際に、投資銀行は人からお金をどんどん借りて投資活動を行いリスク資産を積み上げていくことになる訳です。ちなみに、リーマンブラザーズ元CEOのリチャード・ファルドは2007年には40億円程度の報酬を受け取っていたらしいです。日本の上場企業の社長なんて1億円ももらってないと思うのに。。。

このような背景があり、投資銀行は積極的に投資活動を行いリスク資産を増やしたところに、サブプライム問題が起きたわけです。(サブプライム問題については、時間があれば、別途考察したいと思います。)

そして、投資した資産の価値が下がり大幅に収益が悪化し、そしてお金の貸し手もいなくなり、投資活動に傾斜した投資銀行モデルが成り立たなくなってしまいました。ゴールドマンサックスなどは、投資銀行としては資金調達能力に限界があるとして、商業銀行に業種替えを行いました。

「それで、日本の投資銀行はどうなっちゃうの?」

それは次のエントリーで。

投資銀行ってなんだろう?①

サブプライム問題に端を発した金融不安により、新聞に「投資銀行」という単語が毎日のように出るようになりました。5月にはベアスターンズがJPモルガンチェースに買収され、9月にはリーマンブラザーズが倒産、そしてモルガンスタンレーは三菱UFJ銀行からの資本注入を受け入れました。

そもそも、投資銀行という意味は何なのですかね?投資銀行という言葉って、分かりそうで分からないですよね?「投資」と「銀行」、それぞれの意味は当然理解できますが、二つの単語を合わせると何だかよくわかりません。ネットで語源を調べてみたのですが、特に明確な答えは見つからず、英文でも探してみたのですがやはり結果は同じでした。

投資銀行の説明はだいたい一般的に以下のような説明になっているようです。

・米国のお話し。1930年代、いわゆる銀行は証券業務を行っていました。しかしながら、債権者という優位な立場を利用し、借手に対して株式や債券を強制的に販売する行為が問題視されていました。また、銀行は債権者ですから、借手の企業の情報を一般の人より入手し易い立場におり、それがインサイダー取引に繋がるケースも見られました。そこで、銀行業務と証券業務は本質的に利益相反に繋がってしまうのではないかということが言われ始め、グラス・スティーガル法により、銀行業務と証券業務は同じ会社が行ってはダメということになりました。(JPモルガンとモルガンスタンレーは元々同じ会社だったのですが、この法律により分離されてしまいました。)そして、証券業務を行う銀行を「投資銀行」と呼ぶようになりました。

では、投資銀行がどのような業務を行っているかというと、商社みたいな仲介がメインの仕事なんです。大きく分けると投資銀行のビジネスは二つに分かれます。

・お金を調達したい企業に株式や債券を発行してもらって、それをお金を運用したい投資家に買ってもらうビジネス。これがいわゆるプライマリー業務といわれるものです。このような業務をやってる部署は、IPOを支援する公開引受部、既に上場している会社の株式や債券の発行を手伝うキャピタルマーケット部(資本市場部)、そして不動産やその他の資産を証券化するストラクチャードファイナンス部などがあります。

・もうひとつのビジネスが、投資家と投資家を繋ぐ業務。いわゆるセカンダリー業務(またはセカンダリーマーケット業務)。既に発行された株式なり債券なりを投資銀行が仲介し、投資家同士が売買を行うというもの。エクイティセールスや債券営業、ディーラーやアナリストの業務はここに入ります。

「おい、ちょっと待って!投資銀行と言ったらM&Aではないか!それはどこに入るのじゃ!」という声が聞こえてきそうですが、僕が考えるにはM&Aは実は投資銀行業務のコアではないと思ってます。上記の二つの業務は、米国でも日本でも証券会社でなくては行えない業務なのですが、M&Aのアドバイザリーは誰でもできるんですね。実際、日本では会計系のコンサルティングファームのKPMGやプライスウォーター、そして独立系のGCAなども実績を残しています。では何で投資銀行がM&Aのメインプレーヤーであるかと言うと、二つあるのではないかと思ってます。

    企業の値段の計算(バリュエーション)は誰でもできますが、理論を超えた部分に関しては、常に株式市場と接している投資銀行に一日の長がある。また、株式や債券の発行つまりプライマリービジネスにおいて企業側と接点があり、ビジネスが行い易いこともあると思います。

    M&Aのアドバイザリーにつくと、二次的に他のビジネスも取り込めるため、投資銀行が戦略的に注力したといことも背景としてあると思います。例えば、A社がある会社を買収するとなったら資金調達が必要となりますよね?そうしたら、買収のアドバイザリーに加えて、資金調達の案件(プライマリービジネス)を取れちゃうわけです。

「ふむ。とりあえず、投資銀行が何をやってるか分かったよ。で、何が問題なの?」

それは次のエントリーで。

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